エリート上司の過保護な独占愛
「んっ……いたたた……」

 頭痛で目を覚ました紗衣は、なかなか瞼があけられずにいた。

 (私、どうしたんだっけ?)

 記憶の糸を辿っていく。すると絵美と慎吾の前で倒れたことを思い出した。

 (そっか、そのまま私……。)

 紗衣はここまで思い出して、ようやくここがどこなのだろうかと思い始めた。記憶は一切ないが、ベッドで横になっているのはわかる。

 これが漫画や小説だったら、目をあけるとそこには憧れの人の寝顔があってそこから恋が始まって……そうなるのだろうけれど。

 紗衣は痛みの走る頭で、そんな夢見がちなことを想像しながらなんとかゆっくりと目を開けた。見慣れない天井が目に入りようやくことの重大さに胃のあたりがギュッと絞られる感覚がした。

 (どうしよう……ここ、本当に自分の部屋じゃない)

 ぼやけた視界のままじっと昨日の自分の行動を振り返って見たけれど、まったく思い出せない。恐る恐る隣を見ると、そこには誰かが眠っていた。

「ひっ」

 思わず声を上げて飛びのいた。しかし眼鏡のない紗衣の視界はしっかり目が覚めた今でも不明瞭だ。

(……まさか、私)

 恐る恐るかけられた布団の中を見ると、下着姿である。余計に焦った紗衣は慌ててまわりを見渡し眼鏡を探した。

 しかしそうこうしているうちに、ベッドの中で眠る相手が目を覚ましたようだ。

 (ど、どうしよう! どうしたら、いいんだろう)

 そこで思いついたのは、もう一度布団をかぶって潜ることだった。しかし、その抵抗もむなしく、すぐに布団がはぎ取られた。
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