エリート上司の過保護な独占愛
「はい、これ」

 大迫からビールを渡された。

「私、お酒はちょっと……」

「あれ、飲めなかったっけ? でも大丈夫。今日は俺も付いてるから」

(どうして、大迫さんがいるからって、お酒を飲んでも大丈夫なんだろう?)

 よくわからないが、絵美の婚約パーティの時にお酒はしばらく飲まないと誓った。

「あの、迷惑かけるといけないんで」

 近くにあったオレンジジュースを紙コップに注いで「私はこれで大丈夫です」といい、部長の話に耳を傾けた。

「カンパーイ!」

 爽やかな青空の下に、皆の声が響く。香ばしい肉の焼ける匂いが漂い始めるころには、普段の仕事のときとは違う笑い声が溢れていた。

「え、これって山下さんのアイデアなのか?」

「そうなんです。こうやって処理をしておくと、表面が乾きづらいって、お母さんから教えてもらったんですよ。凄いでしょ? 天瀬課長も褒めてくださいっ! 佑香褒められると伸びるタイプなんですっ」

 それは沙衣と絵美が切った野菜だ。もちろん佑香は何もしていない。

 佑香に名指しされた裕貴は「あぁ」と短く笑顔で答えた。それを見た絵美が烈火のごとく怒り始める。
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