エリート上司の過保護な独占愛
「アイツっ! 紗衣がやったことそのまんま自分の手がら見たいにっ!」

 腕まくりして、その会話に乗り込んで行きそうになっていたのを紗衣が止めた。

「どうして止めるのよ。ああやって点数稼ぎして、ああいうの私大っ嫌いなのに」

「でも、せっかく楽しい雰囲気だし。いいじゃないですか」

「よくない! ああやって、馬鹿な男が騙されるんだよっ。好きな人があんな計算女に騙されても、紗衣は平気なの?」

 その会話をしている集団に、裕貴もいた。それを絵美は心配しているんだろう。たしかに、佑香の周りにいる男性社員は楽しそうに話をしている。彼女は周りにいる男性を楽しませることができるタイプの人間だ。

(私とは違う……私は……)

 新入社員の時に言われた『辛気臭い』と言われたことを思い出してしまう。気持ちが落ち込みそうになった。

「濱中~こっちこい!」

 すでに酒に酔ったらしい部長が絵美を呼んだ。

「ごめん、紗衣。私ちょっと行ってくるから」

「はい。私、今のうちに向こうの片付けしてきますね」

 気分転換には丁度いい。紗衣はまだ片付いていない炊事場に向かった。
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