エリート上司の過保護な独占愛
 皆の輪から外れると、どこからか鳥のさえずりが聞こえた。それを聞きながらビニール袋に野菜の屑を集めて、流しの周りを綺麗にした。

 いつになったら、こういう集まりが得意になるのだろうか。もともと大勢ではしゃぐタイプではないけれど、いろいろと気をつかってしまってなんだか楽しめない自分が不適合者のような気になってしまう。

(すぐに落ち込む癖もどうにかしなきゃ)

 一通り綺麗にして、あとは片付けのときにも使うものだけを残して皆のところに戻ろうと歩き出す。すると向こうから裕貴が歩いて来るのが見えた。

「こんなところにいたのか、みんなあっちでもう食ってるのに。本城が下処理した野菜みんないいアイデアだって褒めてたぞ」

「少し片付けが残っていたので、あの、でももう終わりましたから。それよりあのお野菜の件――」

「山下は直前までこっちでしゃべってたし、濱中は料理の初心者。だったら、ああいう気の利いたことをするのはうちの課じゃ本城だけだろ?」

「気づいてたんですか?」

「あぁ。ああいうわかりやすい嘘をつく女は、俺個人としては苦手だから。仕事中はそういう感情持ち込まないようにしてるけどな」

 気がついてくれたことがうれしくて、思わず笑顔がこぼれた。彼の顔を見上げる。

 明るい日の光を背にした裕貴を、紗衣は目を細めて見上げた。顔が影になってしまって表情があまり読めない。

「ちょっとだけ……いい?」

「……? はい」
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