エリート上司の過保護な独占愛
 返事をすると、すぐに裕貴が皆がいる場所とは反対方向へ歩き出した。人工の小川にかかる小さな橋を渡り、雑木林の中のハイキングコースを歩く。

(どこに行くつもりなんだろう……)

 いつもなら、こうやって歩く間も裕貴が気を遣ってくれて何かしら話をしていた。しかし今日は黙ったまま前を歩くだけだ。

(何かあったんだろうか、どうしよう)

 何時もと様子の違う裕貴に、悪いことばかり考えてしまう。すると彼の足が止まり、後ろを振り向き紗衣をじっと見つめた。

「悪い、こんなところまで連れて来て」

 裕貴が首のあたりに手をおいて、なんだか居心地が悪そうだ。何かを話そうとしているのに、言いづらいのか話そうとして口を開いたが言い淀んでいる。

 その様子がより不安を掻き立てた。紗衣が覚悟を決めた時……裕貴の真剣な眼差しに射抜かれる。

「本城――俺とつき合って欲しい」

「……えっ」
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