エリート上司の過保護な独占愛
「そろそろ、羊の皮を脱ぐつもりだけど、いい?」

「えっ……」

『いい?』と尋ねたけれど、裕貴は紗衣の返事など待つつもりはなかった。ゆっくりと親指で柔らかい沙衣の唇をなぞりながら、頬に吐息の感じる距離まで顔が近づく。

 紗衣が自然に瞼を閉じた瞬間――ふたりの唇が重なった。

 ほんの少しふれるだけの、優しいキス。けれど触れ合った場所から、お互いの想いが流れ込んでくる。

 唇が離れたあと、裕貴が紗衣をギュッと抱きしめた。痛いくらいの腕の力が彼の思いを表しているような気がして、それさえも幸せに感じたのだった。

 暫くお互いを抱きしめあっていると、紗衣のポケットでスマートフォンが震え出した。取り出してみるとディスプレイには絵美の名前が表示されていた。

 裕貴の顔を窺う。すると、小さくうなずいて電話に出るように促された。

「もしもし――」

《ちょっと、紗衣ってば今どこにいるの?》

 どうやら紗衣の姿が見えずに、探してくれていたようだ。

「すみません。ちょっと散歩してたんです。今、そっちに戻りますから」

 電話を切りながら、裕貴の方を見ると苦笑いをしていた。
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