エリート上司の過保護な独占愛
「いやっ!」

「何、かわいい声出してるの?」

「へ?」

 聞こえてきた聞き覚えのある声に、すぐに目を見開いた。ぼんやりではあるが、相手がわかった。

「絵美……さん?」

「おはよう。よっぱらいさん」

 絵美はそう言うと、まわりがよく見えていない紗衣に眼鏡を手渡した。

 慌てて眼鏡をかけると、やっと現実世界に引き戻されたような気がした。そして目の前にいる絵美と、何度か目にしたことのある彼女の部屋を確認してほっと胸をなでおろした。

「あの、すみません。色々ご迷惑かけた……んですよね?」

 恐る恐る目の前の絵美に尋ねた。

「まぁね。紗衣ったら、あのあとどんなことしても起きないし、ここまで慎吾と天瀬課長に手伝ってもらって運んでくるの大変だったんだからね」

「あの、本当にゴメンなさい」

 思いっきり頭を下げたせいか、頭がガンガンする。しかしその頭でもう一度、絵美の言葉をリフレインした。
 
(天瀬課長って言った? 天瀬課長も一緒にここまで私を!?)

 なんだか頭痛が激しくなった気がして、頭をより深く下げてベッドにめり込ませた。

「ちょ、ちょっとそこまで謝らなくてもいいわよ。それよりも、気になることがあるの」

 めり込ませていた顔をあげた紗衣が目にしたのは、ニヤニヤと悪い顔で笑う絵美の姿だった。

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