エリート上司の過保護な独占愛
 裕貴の手が伸びてきて頬に触れる。

「あんまり無防備でいられると、俺としてはちょっと罪悪感がある」

 彼の手が優しく頬を包み込む。何か言葉を発するべきなのかもしれない。けれど沙衣は何も言えずに、緊張から喉をごくりと鳴らしてしまう。

「なぁ、昼間言ったこと覚えてる?」

 どの言葉を指しているのかわからない沙衣は、首を左右に振った。

「『羊の皮を脱ぐ』って言ったこと。それって、狼になるって意味だけど、ちゃんと理解してる?」

「お、おおかみ……って」

 赤い顔でたどたどしい言葉しか出せない沙衣に、微笑みかけた。それは今までの裕貴から感じたことのない色気が含まれていて……。

「こういうこと――」

 色々理解する間もなかった。それくらいあっという間に沙衣の唇が裕貴のそれと重なった。目をつむり彼を受け入れた。

 重ねた唇がほんの少しだけ離れる。触れ合うくらいの至近距離で裕貴が沙衣に諭すように話す。

「こういうこと……わかった?」

「……はい」

 掠れた声で返事をした沙衣に「いい子だ」といった裕貴は、もう一度彼女に口づけた。それはさっきよりも熱がこもっていて、角度を変えて何度も繰り返された。息苦しさと、痛いくらいの胸の鼓動に何も考えられなくなってしまう。

 息継ぎさえも上手にできない沙衣。そのタイミングを見計らったように少し唇を離す裕貴。解放され、唇を開いた沙衣が息を吸い込む。その刹那、裕貴の唇がもう一度重なった。開いた唇から、熱い塊が差し込まれる。

びっくりして奥にひっこめていた沙衣の舌は、すぐに裕貴のそれによってとらえられた。
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