エリート上司の過保護な独占愛
 部屋に戻った沙衣は、バッグを床に置いたままそのままどさりとソファに座った。

 頭の中は、今日一日に起こった出来事でいっぱいだ。

 ぼーっと余韻に浸っていると、スマートフォンがSNSのメッセージの通知をした。
画面を確認すると、今日最後に皆で取った集合写真がアップされていた。

(確かこのとき……)

 一番後ろの列に絵美と並んで立っていた沙衣の横に、何食わぬ顔で裕貴が立った。それだけでも、告白のこともありいつもと違う雰囲気に緊張してしまったのに、裕貴は誰にも見られないようにそっと手を握ってきた。

 その時のことが思い出されて、途端に胸がドキドキした。なんだか隠れて悪いことをしているような……そんな秘密を共有している親密さが、ときめきに拍車をかけたように思う。

 告白されたときの真剣なまなざし、腕を優しくつかんだ大きな手、くすくすと笑う笑顔、そして――思考のすべてを奪ってしまうような熱いキス。

 思い出すだけで、身もだえするほどの甘さが身体中に駆け巡る。隣に置いてあったクッションを抱えて、足をバタバタさせた。

しかし気持ちの高ぶりはどうやってもおさえられそうにない。その日は結局、遅くまで興奮したまま寝付けずにいた。

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