エリート上司の過保護な独占愛
「ごめん、ちょっと会社に戻らないと」

 脱いでいたジャケットを羽織る裕貴が、すまなさそうに沙衣を見た。

「あの、私もお手伝いできることがあるなら、一緒に戻りますけど」

「いや、今回は海外事業課の関連の話だから。気持ちだけもらっとく。ありがとう」

 頭をポンポンと撫でると、裕貴は一万円札テーブルに置こうとする。

「いいって、ビール一口で一万円とか、どんだけぼったくりだよ」

 慎吾の言葉に裕貴が返す。

「これは、俺と沙衣の飲み代と、沙衣のタクシー代。濱中、悪いけど、こいつのこと頼む」

「はいはい。了解です!」

「じゃあな、あとで電話する」

「はい」

 裕貴は最後に名残惜しそうに沙衣を見ると、急ぎ足で店を出て行った。

「あ~あ、行っちゃった。って思ってる?」

「あー、はい」

 心の中を読まれて、苦笑いするしかない。

 絵美は自分のグラスを持って、さっきまで裕貴が座っていた沙衣の隣に移動する。慎吾が「絵美ちゃ~ん」と情けない声を出したが、絵美は無視をした。

「うまくいってるみたいね」

「そうでしょうか? なんだかよくわからなくて。課長が優しいのは以前からですし」
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