風の旋律
胸騒ぎが治まらない。
さっきまでの幸せな鼓動はもうどこにもない。
あるのは、心配と嫌な予感だけだ。
学校まで戻って、僕は思い知った。
………僕は…音羽のことを何も知らなかったんだ。
大体の住所も、仲の良い友達も、何も…………
『くっ……そぉぉおぉ!!』
地面を思いっきり踏みつけた。
足に鈍い痛みが走る。
それでも、胸騒ぎは大きくなるだけ。
校門から出てくる部活で帰りが遅い人達が、僕を訝しげに見ていた。
ふっと…………
いきなりある人物の顔が浮かんだ。
僕の足は、校舎の最上階…
僕と音羽の大切な場所へ駆け出していた。