風の旋律
『島村先生!!』
思い切り、音楽室の扉を開けた。
普段あまり運動をしない僕の足は、筋肉が引きつって痛み、息は上がり、額には汗が滲んでいた。
「どうしたんだ!?」
驚いた表情で準備室から出てきた島村先生。
『音羽の家はどこですか!?
大体の住所だけでも、どの方面かだけでもいいんです!
教えてください!』
僕は島村先生に掴み掛かるようにして、質問をぶつけた。
無意識になのか、付けていたはずの手袋やマフラーは床に落ちていて、コートも前が開いていた。
階段を登っているときに取ったのだと、まだ頭の隅に残っていた冷静な僕が答える。
「どうしたんだ?落ち着いて。
何かあったのか?
生徒の個人情報は簡単に教えられないよ。」
先生は諭すように僕の肩を抱いた。
『何かあったのかも知れないんです!
悲鳴が聞こえて、電話が切れたんです!
下校途中だったはずだから……。
通学してる大体の道で構いません!
教えてください!!』