風の旋律
「祐介君、じゃあ、もう一度弾いて……」


『うざったい。』


先生の言葉を遮る。


『いい加減にしろよ。』


「…祐介君?」



先生……いや、気取ったババァの、作った笑顔の仮面が剥れていく。




「どうしたの、祐介?」


キッチンから義母が出てきた。



そう、僕はこの家の本当の息子ではない。



『もう……限界なんだよ……』



怒りで声が震える。



『僕はこんなピアノが弾きたいんじゃない!

もっと自由に…自分を表現できる音が弾きたいんだ!

こんな強制的に……まるで機械みたいに!こうと決められた音なんて…
誰も何も感じない!!

僕が弾きたいのは……僕の音だ!!』




一気に喋った僕は息が上がっていた。


義母と先生は唖然としている。




もともと僕は施設にいて、子供のできないこの家に、二歳の頃に引き取られた。


ピアノは、この家に来たときに初めて弾いた。



義母が弾いていた“ショパンのノクターン”を耳コピして弾いた僕に、才能があると思ったのだろう。




しかし僕には才能なんてない。


プロのようにピアノを弾きたいなんて思わない。



僕を大切に育ててくれた義父母には悪いけど……




………こんな生活が続くなら、









………施設に帰る。












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