風の旋律
「祐介くん。
せっかく来てくれたところ悪いが………
今日は帰ってくれ。」
…………一瞬、何も考えられなくなった。
『……どうしてですか?』
まっすぐに亨さんを見つめた。
でも、亨さんは狼狽えることなく見つめ返した。
「どうしてもだ。」
『いつなら…あえますか?』
「………。」
『僕は………音羽には会わせられないような男なんですか?』
「……………。」
『亨さん!!』
込み上げてくるもどかしさと、沸き上がってくる怒りを抑えられなくなってきたとき、
「上川くん。」
島村先生が僕の肩を掴んだ。
亨さんだけを見ていたせいか、近づく島村先生に気付かなかった。
それでも亨さんから目を離さない僕を、島村先生は半ば強制的に、先生の車へ連れていった。
亨さんも、最後まで僕から真剣な顔を逸らさなかった。