風の旋律
「落ち着いたらきっと……
お見舞いだって許されるだろうから。
でも…上川くんから、彼女に連絡はしないで欲しいと、亨さんに伝言を頼まれた。
落ち着くまでは待ってほしいと…。」
帰りの車の中、島村先生は僕に気を遣ってか、宥めるような口調で話し掛けた。
「……本当に、家まで送らなくていいの?」
『駅までで…大丈夫です。
僕は、何がショックでも、馬鹿な考えは起こしませんから大丈夫です。』
確かに今の僕は何をするか分からないような空気を出してるかも知れないけど…
音羽を守ると決めたから、馬鹿な事はしない。
『島村先生……
落ち着くまでって、何が“落ち着く”までなんですか?』
「え?」
静かに、重く吐き出した僕の問いかけに、戸惑っているような先生。
僕は答えを待つ間も、ただ嫌味なくらい美しい星空を見上げていた。