風の旋律



「おかえりなさい、祐介くん。

お腹空いてない?ご飯食べられる?」




施設に着いた僕に優しく声をかけた中丸さん。




『ただいま。
今日は…夕飯はいいです。

少し、考えたくて…。』




目を合わせずに応えた僕を心配そうに見つめた中丸さんだけど、今の僕には、それを拭えるだけの言葉は浮かんでこなかった。







「早くお風呂に入って、暖かくして寝るのよ。」






部屋に向かう僕に、また優しい言葉をくれた。






子供たちはもう寝ている時間。




“友達が事故にあった”




としか伝えていなかったのに、中丸さんは何も問い詰めたりはしなかった。




僕の雰囲気を察してくれた優しさに、心の中で何度もお礼を言った。















―――亨さんは、君と音符ちゃんを引き離したりはしないよ!


―――ただ、君はつらい思いをすると覚悟しておいた方がいい。






島村先生が、別れ際に僕に言った言葉が頭から離れない。





つらい思いをする………









そんなの…………











もう、慣れっこだよ。















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