風の旋律
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この白い扉の向こうに、音羽がいる。
僕は、音羽の病室の前で動けずにいる。
「……祐介くん…。
無理なら、会わなくてもいいんだよ。
君に迷惑はかけられない。」
横からそっと話し掛けた亨さんの声は、僕を追い返した時とはまったく違っていた。
きつく、焦りにも似た、あの時の声。
穏やかで、諦めや疲れのような、今の声。
まるでそれは、今までの音羽の状態を表しているようだ。
僕は音羽を護ると決めたから……。
でも、護ってあげられなかったから……。
この扉を開いて、少しでも音羽の力になってあげたい。