風の旋律





ベッドの背中を起てて、ただただ暗い夜の闇を見つめている音羽。












カーテンが開いたことは分かってるはずなのに…











反対側の窓を見るだけで、こっちを向いてはくれない。















太股の半分くらいしか掛かっていない布団に右手が添えてあった。
















細くて長く、ショパンを美しく弾きこなした指は、ピクリとも動こうとしない。






















『お………とわ……。』









絞りだすように声を出した。












それでも音羽は動かない。











『音羽。』













はっきりと声を発して、僕は一歩、音羽に近づいた。



















カーテンを開けてから、ずっと突き付けられている現実に目を向けないようにして。













< 120 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop