風の旋律
ベッドの背中を起てて、ただただ暗い夜の闇を見つめている音羽。
カーテンが開いたことは分かってるはずなのに…
反対側の窓を見るだけで、こっちを向いてはくれない。
太股の半分くらいしか掛かっていない布団に右手が添えてあった。
細くて長く、ショパンを美しく弾きこなした指は、ピクリとも動こうとしない。
『お………とわ……。』
絞りだすように声を出した。
それでも音羽は動かない。
『音羽。』
はっきりと声を発して、僕は一歩、音羽に近づいた。
カーテンを開けてから、ずっと突き付けられている現実に目を向けないようにして。