風の旋律
こころ
『音羽、僕は、』
「でてってよ!!」
音羽が初めて僕を振り返った。
その頬は涙で濡れ、目は悲しく僕を睨みつけた。
胸が、鋭い何かに刺されたように痛い。
「もうっ…出てって!!」
次の瞬間、音羽は、脇の棚から、ティッシュ箱を投げつけた。
『音羽っ…?』
「出てって!!出てってよ!!」
『音羽っ…、』
枕、ペットボトル、ゴミ箱…………
音羽は狂ったように、僕に手当たり次第ものを投げつけた。
「音羽っ……!!」
音を聞いて、亨さんが病室に入ってきた。
「落ち着け!!音羽!!!」
僕を押し退けてベッドに駆け寄った。
音羽の肩を掴んで宥める亨さんを見てることしか出来なかった。
「音羽……!」
「うっ……うぅっ………」
音羽は、抱き締める亨さんの背中を、弱々しく叩いていた。