風の旋律
「すまなかった…祐介くん…。」
『いえ…。』
言葉が出なかった。
あのあと、音羽は安定剤を投与され、今は静かに眠っている。
亨さんの話によれば、音羽に降ってきた鉄骨は、奇跡的に音羽を避けるように落ちたらしい。
ただ……
左腕を除いて。
骨は粉々に砕け、神経や血管も断裂していて、修復は不可能だったそうだ。
放っておけば、命にも関わってくる。
身内の、もちろん本人の承諾も受けられずに切断するしかなかったそうだ。
―――麻酔が覚めてからの音羽は、それはもう酷かった。
――――見境無く物は投げるは、誰に対しても暴言を吐いた。
―――――仕舞には、“いっそ殺してくれ”とか言ってたな。
苦しそうに笑顔を作りながら話した亨さんは、僕が知っている“三上亨”ではなかった。
頬はこけ、髭も少し伸びていた。
そんなに時間はたっていないはずなのに。