風の旋律
「上川君?」


『あ……ん?』


彼女の声に我に返った。



「ねぇ……
上川君は、何を抱えてるの?」


『え……?』



彼女はイキナリな質問をしてきた。


暖かな目だった。



「上川君……私に似てるトコロがあるの。」


『似てる……?』


「うん。……でも、少し違う。」




そう言って、柔らかく微笑んだ。



この時点で、彼女のイメージは、始めの頃からかなり変わっていた。



堅くてクールだと思っていたけど、本当は……




「ねぇ、アドレス教えて。」


『え…?』


「ケータイ。持ってないの?」



本気で疑っている表情がおかしくて、少し笑った。



『持ってるよ。』


「じゃあ、教えて。
でも、交換したことは誰にも内緒ね。」



彼女は人差し指を顔の前にたてて、眉尻を下げて微笑んだ。





彼女は……




本当は明るく元気な子なのだろう。


たまに見せる笑顔に、そう感じた。



きっと、何かを抱えてるんだ。



過去に何かを……





お互いに暗黙の了解で聞かない。



そういうことだろう。















似ているようで似ていない。



そんな僕らの関係は、









ここからスタートした。














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