風の旋律


―――――――


生まれてすぐに、僕は親に捨てられたんだ。


小さな児童養護施設の前に…。



平仮名で“ゆうすけ”って書かれた紙を握っていたらしい。




ちょうど養子を欲しがっていた、ある夫婦に貰われて、“上川 祐介”になった。




子供ができないから、純粋に子供が欲しかったらしい。



僕は、とっても可愛がってもらってたらしい。




………ある時までは。







まだ物心つく前だったから、僕には可愛がってもらった記憶はないんだけどね。






その家には、お金があったらしくて、グランドピアノがあったんだ。




幼い僕は、興味本位でいじるようになったらしい。




ピアノを弾ける義母は、そんな僕に、クラシックをたくさん弾いて聞かせてくれた。




楽譜も、鍵盤のドの位置も分からないはずの僕が、


ある時、急にメロディラインを完全に再現して弾いてみせたらしい。





今はもう、そんな能力ないけどね。







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