風の旋律
少し苛めてみようとも思ったが、彼女はまた直ぐにクールで人間不信の“三上さん”に戻ってしまった。
“学校では音羽って呼ばないでね。てゆーか、変に話しかけないでね。今までと同じ、他人にしといて。”
さっきまでの“女の子”だったら、ヤダって冗談言えるんだけどな。
彼女の立場も考えて、素直にお願い(命令)に従った。
「ゆうすけにぃちゃん!なんかいーことあったでしょ?」
夕食の時間。
子供達が目をキラキラさせて訊いてきた。
『…どうして?』
「あーー!!微笑んだぁ!
絶対いーことあったってぇ!」
「しずせんせぇ!!ゆうすけにぃちゃん、いーことあったと思うでしょ?」
「帝悟。黙って食べなさい。」
騒ぐ帝悟(ダイゴ)は、水野 静先生(ミズノ シズカ)によって制された。
施設は小さいだけあって、先生は3人しかいない。
食事など、事務的なことをしてくれる中丸さん(女・53)をいれても、片手で足りる。
「帝悟~!おぎょうぎ悪いよ!!」
「なんだよ!ゆうすけにぃちゃんにいーことあったんだぞ!気になるだろ!」
『だからって、口に物をいれてしゃべるな。』
僕は騒ぐ帝悟の右頬をつねった。
「ほめんらは~い…。」
酷い顔。
笑える。