風の旋律
「ほ~。どのくらい弾いてるのかな?」
僕の脳裏に、灰色だった世界が浮かび上がった。
『最近はめっきり弾いてないんですよ。だからもう弾けないと思います。』
作った笑顔は、苦笑いをより苦くしたようだっただろう。
「まぁ、ブランクがあるとねー。」
「まぁ、猫ふんじゃったでもいいから、弾いてくれないか?
私のファンがどれだけ弾けるのか聞いてみたい。
ダメかな?」
三上親子は、僕にピアノを弾いてほしいと言う。
こんなこと滅多にないことだ。
でも………。
「……祐介?どうしたの?顔色悪くない?」
『えっ…?』
まずい。
『いや、大先生の前で弾くなんて緊張しちゃうし…。』
「あはは!大先生だって!お父さん。」
なんとか誤魔化せたか。
この場を切り抜けるには弾くしかない。
でも……
手が震える……
嫌な記憶が湧き出てくる。
無心になれ………
無心になれ、自分!!!!