風の旋律
最後の和音を弾ききった僕の体は、久々の演奏に疲れたようだ。
鍵盤から手を離した瞬間、全身の力が抜けた。
ふと気付くと、音楽室は静まり返っていた。
「……祐介くん……。
君……何年ピアノを弾いていない?」
亨さんが、少し怖い顔で聞いて来た。
『えと………
もう…5、6年ほど触ってないと思います…。』
「5、6年……。」
呟いた亨さんは、少し考え込んだように下を向いた。
気がつくと、僕の肩に音羽の手が乗っていた。
『音羽…?』