風の旋律
「でも、私はずっとこのまま変わらないと思うわ。
相手の目で、私をどう思ってるのか分かるけど、だからといって、どうこうしようなんて、する気が起きないの。

……世界が違うから。」



『世界……?』







「私と、私を軽蔑する人達とじゃ、




“見てきた世界”が違うのよ。」







彼女は、どこか遠くを見つめていた。



さっきまで曇っていた空から、小さな滴が落ちてきていた。











『……1人1人、見てきた世界は違うと思うけど。』




「そういう“世界”じゃないわ、私が言いたいのは。」





『?』









哀しい瞳で、彼女は微笑んだ。




僕は彼女の言葉の趣旨が掴めずにいた。







ただ、彼女がこの高校に来る前の経歴が関係しているんじゃないかって、少し思った。









「ねぇ、私、“向こう”で何て呼ばれてたか知ってる?」





『え……?

確か…、“ショパンの申し子”……?』







「フフ、やっぱり知ってるのね。」




『君の事は、転校して来る前から、先生達からかなり聞かされてたから。』



「でしょうね。」








そう、彼女は、世界的に有名なピアニスト。








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