風の旋律
「ほんとの友達なんて…できないよ。
上辺だけになるのがオチ。
周りはもう、私を同じ高校生に見てないから。周りも、私と世界が違うと思ってるから。」
だから……
と言ったところで口をつぐんだ音羽。
『…一歩踏み出しちゃえば、後戻りできないくらいに自分のキャラを崩しちゃえば、それで世界はかわるよ。
…………ていうか、こんな臭い事言う男じゃなかったんだけどなぁ…僕。』
そこでやっと、音羽から笑みがもれた。
「ほんと!笑っちゃうくらい臭いよ、祐介!」
はは……
恥ずかしい……
「ねぇ祐介……。
私、キャラ崩して、友達できたとして、変わると思う?」
『?』
「私、愛想笑いができないの。上辺だけの関係が無理なのは、そういう理由もあるからなの。
でも、祐介といると、自然に笑えたの。
お父さんの言う通り、私は頑固だし、ほんとはうるさいし、我儘だし、感情の起伏激しいし、すぐ落ち込むし……。
こんな子、まず友達できないよ。」
『……。』
頑固で、我道を行く音羽は、意外と繊細で、謙虚な子だったらしい。
『別に、キャラを崩すっていうのは、今まで作ってたのを剥して素を出すってだけで、また新しいキャラを作るんじゃないよ。
それに、気に入られるキャラを作るんじゃなくてさ。素の自分を受け入れてくれる友達みつければいいんだよ!』