風の旋律
放課後、週番だった僕は少し遅れて、小走りで音楽室へ向かった。
防音のための2重扉を1枚開けた時、僕は2枚の扉に挟まれたまま固まった。
「三上、ショパンの“別れの曲”、弾いてくれないか?」
島村先生の声がした。
もし、合唱部でも吹奏楽部でもない僕が、ここで音楽室に入ったら、確実に噂が本当だと思われてしまうだろう。
「…………嫌です。」
静かに重い声をだした音羽。
……いつもと違う…。
「俺、よく準備室にいたけど…お前この学校に来てからショパン弾いてないだろ?」
あ………そういえば…。
ショパンはいつも僕が弾いてた。
音羽が“聞く方が好き”って言うから…。
「“ショパンの申し子”とまで言われた三上音羽がどうした?」