風の旋律
「……………………。」
音羽……?
音羽の声が聞こえなくなった。
今、どんな顔してる?
何を考えてる?
いますぐ駆け寄って、話を聞いてあげたい。
何がショパンを拒むのか…。
でも、僕はそれができない臆病者だ。
「……“彼”に弾かせて、その音に甘えるのも良いかもしれないけど…
少しは自分の力で一歩踏み出してみたらどうだ?」
“彼”………?
島村先生は………
僕を知ってる……?
「………知ってたんですね。」
「ずっとピアノを聞いてただけだけど、この前、6階から駆け降りて行く彼を見掛けてね。
まさかとは思ったけど、この階には、もう君以外に生徒は残っていなくて。
残った君のピアノはやはり君の音で…、確信した。」
「…………。」
6階って……
音楽室のあるこの階だ…。