風の旋律
不協和音
―――10数年前、オーストリア
「おぉ!!大地くんじゃないか。」
スーツを自然に着こなした、“ダンディ”という言葉が似合う優しい笑顔の中年男性が声をかけたのは
襟足を少し伸ばした茶髪に、まだあどけなさの残る少年だった。
呼び掛けられて振り向いた彼は、その年齢に相応しくない位、灰色のスーツが似合っていた。
「あ、亨さん!!お久しぶりです!
亨さんのウィーン公演以来ですね。」
中年男性は、当時から世界中で引っ張りだこだった日本人ピアニスト、三上亨さんだった。
「そうだな。
相変わらず君は高校生らしくないな。大人びすぎじゃないか?」
亨さんが声を掛けたのは、当時高校生だった島村先生……広瀬大地だった。
「そんなことありませんよ。
僕は普通の高校生です!」
悪戯っぽい笑顔は、爽やかだった。
「いや、大地くんは大人びているよ。
さすが期待の新人だね。」
広瀬大地はバイオリンを専攻していた。
オーストリアに3年留学している広瀬は、亨さんにも認められていて、亨さんの公演にもよく招待されていた。
彼のバイオリンの音は斬新で、少しずつ注目されるようになっていた。
「亨さんにそう言っていただけると嬉しいです。」
“イケメン”
きっと日本ではそう言われるだろう。
「お父さん…?」
「おぉ!!大地くんじゃないか。」
スーツを自然に着こなした、“ダンディ”という言葉が似合う優しい笑顔の中年男性が声をかけたのは
襟足を少し伸ばした茶髪に、まだあどけなさの残る少年だった。
呼び掛けられて振り向いた彼は、その年齢に相応しくない位、灰色のスーツが似合っていた。
「あ、亨さん!!お久しぶりです!
亨さんのウィーン公演以来ですね。」
中年男性は、当時から世界中で引っ張りだこだった日本人ピアニスト、三上亨さんだった。
「そうだな。
相変わらず君は高校生らしくないな。大人びすぎじゃないか?」
亨さんが声を掛けたのは、当時高校生だった島村先生……広瀬大地だった。
「そんなことありませんよ。
僕は普通の高校生です!」
悪戯っぽい笑顔は、爽やかだった。
「いや、大地くんは大人びているよ。
さすが期待の新人だね。」
広瀬大地はバイオリンを専攻していた。
オーストリアに3年留学している広瀬は、亨さんにも認められていて、亨さんの公演にもよく招待されていた。
彼のバイオリンの音は斬新で、少しずつ注目されるようになっていた。
「亨さんにそう言っていただけると嬉しいです。」
“イケメン”
きっと日本ではそう言われるだろう。
「お父さん…?」