風の旋律
「音羽ちゃんの“音”って字は残ってますし、ピアノをしてる訳ですし、響きも可愛いですよね。」
ぱぁっと顔を明るくして笑った広瀬。
その笑顔はやはり高校生のものだった。
「可愛らしいじゃないか、“音符”。
良かったな音羽。いいあだ名ができたな!」
さっきからポカンと、背の高い男2人を見上げていた音羽に、優しく笑いかけた亨さん。
「うんっ!!」
純粋な、あどけない笑顔をした音羽。
「気に入ってくれたかな?
そういえば、亨さんは日本へは帰国してらっしゃるんですか?
クラシックには殆ど興味のない日本のメディアも、これだけ注目されてる亨さんは放っておかないでしょう?」
優しい微笑みで音羽を一瞥した広瀬は、怪しく笑った。
「それは皮肉かな?期待の新鋭くん?」
「皮肉です。……メディアに対する。」
お互いに怪しく微笑みあった2人は、少し吹き出した。