風の旋律



「僕にとって音楽は……“義務”のようなものなんです、昔から。

親に言われるがままに色々な楽器を触って…一番良いと思ったバイオリンを、留学までして鍛え上げられて……

そうしなくてはいけないんです、僕は。

プロまでは、何も言われていませんが、音楽関係の仕事をしないといけないと思います。

両親の言うことを聞いて、その通りに生きることしか、僕にはできないんです。

昔から僕に意志はありませんでしたから…僕はそれしか知らないんです。」






静かに息を吐き出した広瀬を見つめた亨さん。




「君の両親のことは知っている。
2人とも素晴らしい才能をもっている。

……少々傲慢な性格も分かっている。

他人の家庭にいちいち口を挟む気はないよ、安心しなさい。
自分がいつも正しいとは思っていないから、あまり自分の意見を言うのは好きじゃないんだ。」





優しい微笑みを含んだ声で話した亨さんは、そっと音符ちゃんを抱き上げた。





「今日はこれから、この子がコンサートに出るんだ。
同世代の子達に混じって。

それで、この子は少しあがり症でね。
しかもナイーブで、まわりの子が上手い演奏をすると落ち込んで、塞ぎ込むこともあった。

それで、君に頼みたい事があるんだ。


時間があったら、コンサートに来てくれないか。演奏を聞いてもらってから頼みたいんだ。」






広瀬の話を聞いたことなど、なかったことのように、一気に話した亨さん。





その亨さんに困惑している広瀬。




その広瀬を半ば強引にコンサートに連れていった。











ここから、広瀬と音符ちゃんの不思議な関係が始まった。









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