風の旋律
“あがり症でナイーブ”



そんなのを感じさせない演奏であったが、その表情は堅く、チラリとも客席に目を向けなかった。




「すごい……」




思わず声を漏らした広瀬に、満足そうな顔を向けた亨さん。










………音羽は本当の天才だった。






あの歳でショパンをあそこまで完璧に表現する少女は他にいない。




一緒にコンサートに出ていた子と比べれば、明らかに才能が抜きん出ていた。







“ショパンの申し子”







その異名で注目を浴びるのは、このすぐ後である。







「広瀬くん。
頼みたいことがある。」






コンサート終了後、改めて口を開いた亨さん。







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