風の旋律
昔から広瀬はなんでもできた。
特に努力している訳でもないのに、1番だった。
とくに彼の音楽は世界からも注目が集まるほどだった。
でも………
それは全て両親の七光りから得たものだったのかもしれない。
日本では“高校生”と呼ばれる歳の広瀬には、親の栄光に自分の能力が埋もれている気がして、反抗意識が芽生えていた。
自分の音楽を聞く人は、自分じゃなくて親を見ている気がしてならなかった。
義務のようになっていた自分の音楽。
でも音羽は…?
まだ親の偉大さを理解しきれていないあの娘は…?
純粋に好きなことをしているだけなんじゃないのか?
なら、あの娘もいつか自分のようになるんじゃないのか……?