風の旋律
共鳴する心
電話の向こうで黙ってしまった音羽。
どんな顔をしてるんだろう?
僕が口を開こうとしたとき、音羽が静かに話しだした。
「お父さんは、あの人の才能をかっていたし、あの人の両親のことも…。」
島村先生のことはあくまでも“あの人”なんだなあ…
『気になってたんだけど…島村先生の両親が音楽家なのは分かったけど、何か気になる事でもあるの?』
「うん…。
あの人の両親は凄く才能のある人達だったんだけど…。
強引な人としても有名で、あの人にも色々と強要してたみたいなの。
音楽の道に進むことも、楽器までも両親が決めたことなの。
それでも、やっぱり力はある人だから、お父さんはほっとけなくて、私の先生になって音楽に本気になって欲しかったみたい。
でも…あの人は、自分の中の音楽への苛立ちを全部私にぶつけた。
私のピアノを全部否定した……。」
音羽の声が震えてる気がした。
「私は…音楽も…ピアノもショパンも好きだったのに…。
弾くのが恐くなった。
手が震えて、鍵盤を拒否してるの。」
『………。』
泣くのを堪えているような声。
『明日……。』
「え…?」
『明日……
放課後、音楽室に来て。
約束…。』
「わかった……。」
僕は静かに電話を切った。