風の旋律



「…今日は、俺は居ないほうが良さそうだな。」




放課後、ただ黙ってピアノの前に座る僕に声を掛けたのは、島村先生。




『……できれば。』





静かに言った僕に応えることなく、音楽準備室の扉はしまった。





ふぅっ……




なんか、気持ちが落ち着き過ぎてて怖い。





きっと、島村先生は職員室に戻ったのだろう。




音楽室は、静まり返っていた。





………………





『………おいで、音羽。』






静かに開いた扉。





『大丈夫。叱ったり、諭したりはしないから。

おいで…。』






思い詰めた表情をした音羽が入ってきた。







「……祐介、ごめんね。

…………ありがとう…。」






優しく微笑んだ頬に、涙が一筋光った。







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