風の旋律
「祐介に甘えてたんだね、私。
祐介の、私に似た自由なピアノを聞いて、安心してたのかも。
“自由な演奏でも感動する”って。
でも甘えてたくせに、自分は弾けるようにならなくて、悔しくて…。
でも祐介は、そんな私を助けてくれて…友達もできた。
気持ちが楽になってきたの。
やっと…ショパンが弾けるようになれるかなってときに、広瀬お兄ちゃんに再会して…。
怖くて……今も怖い。
でもね……今日の朝、広瀬お兄ちゃんと話をしたの。」
『え?』
「“ごめん”て、謝られちゃった。
広瀬お兄ちゃんの気持ちも全部聞いた。
今までの私なら、キレちゃってたかな?
でも、許しちゃったよ、私。
なんでかな?祐介に会ってから、私、穏やかになった気がする。」
『………。』
僕は……
音羽を穏やかに変えられるほど、寛大で良い男じゃない。
『…それは、音羽が元の音羽に戻ったんだよ。
僕の力じゃない。』
音羽が少し笑った気がした。
「祐介は、自分のこと分かってないんだね。」
『まぁ…分かってるとは言えないけど…。』
「ふふっ
祐介らしい答えだね。」
僕らしい……?
考えたこともなかったなぁ…。
『僕も…音羽にあって、少し変わった気がする。
なんか…クサくなった。』
「あはは!
祐介がクサいのは、昔からじゃなかったんだぁ!!」