御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(え……?)

それは友人カップルを素直に受け入れ、歓待するという雰囲気ではない。
もっと複雑で説明のしづらい、早穂子もどう判断していいかわからない眼差しだった。

(もしかしてふたりのことが、気になってる……?)

けれど始がそんな顔をしたのは一瞬で。

「ちょっと行ってくるね」

さらっとそう言うと、いつものような軽やかな笑顔になり、ソファを立ち上がってグラスを二つ手に取って二人のもとへと向かう。

そしてふたりに声を掛け、軽くハグし合った後、ペラペラと実に流ちょうな外国語で話し始めた。

英語じゃないことはわかるが、それだけだ。
始はこちらに背をむけたままで、三人はそのまま部屋の奥にあるテーブルセットのほうへと移動した。

(いったいなんの話をするんだろう……)

もちろん英語も話せない早穂子からしたら、そんな場所に連れていかれても困るだけなので、これでいいはずなのだが。
ついさっき、もう大丈夫だと思ったはずの早穂子の胸はまた重く沈み始めていた。
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