御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
始はわがままのようなことを言って早穂子を振り回すが、それはあくまでもフリだ。
彼は恋愛を楽しむためのスパイス以上のことを、早穂子に求めたりはしないのだった。
(任されたところで、私に何ができるかって思うんだけど……少し寂しかったりするのよね……)
だがこれは、今ここで彼に言うことではない、関係ないと早穂子は思ったのだが。
白臣は持っていたグラスをテーブルの上に置いて、恐ろしく長い足を組み、足の上に組んだ手を置いた。
「もちろん俺は、そこが始さんのいけない所でもあるとは思いますけどね」
「あ……」
ずばり心の奥底を覗き込まれたような気がして、早穂子はドキッとした。
槇白臣――。
やはり始の友人だけあって人をよく見ている。
涼し気な美男子の中身は只者ではないようだ。
「余計なお世話でしたね」
白臣はにっこりと笑うが、早穂子は首を振った。
「いえ……。ありがとうございます」
自分の中にある小さな焦りなど彼にはすべてお見通しらしい。
寄り添ってもらえた気がして気が楽になる。
気遣いに感謝しながら、また早穂子はぺこりと頭を下げた。