御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「始さんにシロって呼ばれると、犬みたいだなって思うんだけど、まぁ仕方ないかなって許してしまうんですよ。強引だけど憎めないから、あの人」
強引で憎めないという白臣の言葉に、早穂子も思わずうなずいてしまう。
「そうなんです、でもそこがまた……」
自分にはたまらなく愛おしく映るのだと思ったその瞬間、
「――ちょっと近いんじゃない?」
突然、ふたりの間に顔が差し込まれる。
「は、始さん……?」
ビックリして振り返ると、始がソファの背もたれに手をついて唇を尖らせていた。
まるで子供のような表情だ。
「ちょっと目を離したすきにこれだよ。口説かないでね。そういうのナシだから」
「口説かれてませんよ」
早穂子が苦笑すると、始は形のいい眉をきりっとさせつつ首を振った。
「いいや、シロが物理的距離を縮めるときは怪しい。俺は、知っている……!」
そして白臣の背後から肩をつかんで耳もとに顔を近づけた。
「お前は人畜無害ですよ、清廉潔白ですよと顔に書いてあるけど、俺の知ってる中では一番おっかない奴だから」