御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「俺は鳥飼和弘(うかいかずひろ)」
「蓮杖早穂子です」
「蓮杖さんね。よろしく」
鳥飼はにこっと笑って、それからグラスを持ち上げて早穂子のグラスにかちんとあわせる。
いきなり名前を呼び捨てたりしないところが、早穂子的には好感度が高い。
ビジュアル的にはすっきりした塩系男子というのだろうか。
(こういう俳優さん、いたよね……)
そう思いながら、早穂子もグラスを持ち上げた。
「カノーロって本社ここじゃないよね。どうして男子ふたりでここに?」
ゆずが不思議そうに首をかしげる。
「ああそれはさ……」
鶴田が口を開く。
二人は二十六歳で、去年までこの近くのショップスタッフとして働いていたらしい。
当時のショップマネージャーが転勤することになり、ふたりで挨拶に行った帰りなのだとか。
現在鳥飼は、人事部で働き、もうひとりの男子――鶴田は販売促進部だという。
「カノーロは、入社して三年はショップで働くからさ。それから各自、適材適所に配属されるんだ」
「あ~、ショップ経験あるんだ。だからふたりともおしゃれなんだね!」
鶴田の言葉に、ゆずが感心したようにうなずいた。
確かに彼女の言うとおり、二人とも頭のてっぺんからつま先まで、まったく隙がない。
靴がピカピカに磨かれているのは当然だが、スーツの着こなしもさまになっている。最初に声を掛けられたとき、アパレルだと思ったのも自然な成り行きだった。