御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
(それにしても夏川さん……ずいぶん鶴田君を気に入ったみたい)
鶴田はいかにもさわやかポーツマンというような雰囲気で、溌剌で活発な印象がある。誰にでも好かれるタイプだ。そしてゆずの好みのど真ん中のようである。
ゆずがキラキラした目で鶴田を見つめるのを眺めながら、そっとワインのグラスに唇をつける。
(夏川さん、がんばって……!)
微笑ましく思いながら心の中で応援していると、目の前の鶴田は、おしゃれだと褒めるゆずの言葉に苦笑しつつ、首を振った。
「いやいや、俺と鳥飼、入社時はマジでださださツインバードって呼ばれてたくらいで」
「ださださ……えっ?」
聞きなれない言葉に、ゆずが首をかしげる。
だが早穂子だってわからない。
いったいどういう意味だろうと、不思議に思いながら鶴田と隣の鳥飼の顔を見比べると、
「鳥飼と俺、同期な上に、ふたりとも名前に鳥がつくから。ツインバード」
鶴田が人懐っこい笑顔で、鳥飼と自分を指指して笑ったのだった。
「なるほど……それでださださ……ツインバード」
ぽつりと早穂子がつぶやくと、ゆずがふふっと噴き出した。
「なんていうか、ちょっとウケる……ごめん……ふふっ」
確かにかなり失礼なあだ名だが、ゴロの良さについ口ずさみたくなる不思議な魅力があるようだ。
「でもまぁ、確かに俺がお客様だったら、当時の俺たちみたいな店員から靴勧められても、うーんって思うし。仕方ないよな」
鳥飼が肩をすくめると、
「そうそう。見た目だけでもむしろ鍛えてもらえてよかったよ」
鶴田もうんうんと深くうなずいた。