御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
強引なナンパをしてくる男子たちとは違って、彼らは紳士だった。
早穂子たちに無理に飲ませることもなく、楽しくワインを飲み、おいしい食事を終えて、店の前で解散することになった。
支払いは彼らがすべて済ませてくれた。全額ごちそうになるわけにはいかないと思ったのだが、彼らは笑って、自分たちが差し出したお金を決して受け取ろうとはしなかった。
「なんだかこっちばかりごちそうになって、ごめんね。でもありがとう」
早穂子とゆずはペコッと頭を下げる。
「また今度改めて飲もうぜ」
「連絡する」
鶴田と鳥飼は口々にそう言って、ひらひらと手を振って駅の方向へと向かって行った。
「――ふふっ」
ゆずがぴょこぴょことつま先で跳ねながら、喜びを体全体で表現している。
(かわいいな……)
恋の始まりを感じて、こっちまで嬉しくなってくる。
「連絡先、交換できた?」
「できたよ~!」
「よかったね」
そこでゆずは、なにを言っているんだと言わんばかりに、にやーっと悪だくみのような笑顔を浮かべた。
「でも、蓮杖さんだって、おしゃれ眼鏡な鳥飼君に聞かれてたでしょ」