御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

どうやらしっかりと見られていたらしい。

「うっ……うん……」

早穂子は急にしどろもどろになりながら、うなずいた。

四人でテーブルに座っていたが、気が付けば隣の席同士でおしゃべりをしていて、ゆずは鶴田と、早穂子は鳥飼と話し込むカタチになっていた。

鳥飼は嬉野出身で、大学から東京に出てきたのだと言う。
少し前に波佐見焼の焼き物を買いに行き、嬉野温泉に泊まったことを話すと、温泉話で盛り上がってしまった。

『温泉って、彼氏と?』

話の途中、鳥飼からさりげない様子で尋ねられたとき、早穂子の胸は一瞬でひやっと冷たくなった。それは自分にとって、触れられたくない事実だった。

(始さんは私の彼氏ではない、よね……)

彼は自分を大事にしてくれるし、かわいがってくれる。

だが自分は恋を楽しむ相手として選ばれただけ。
セフレというほどドライではないが、今このひと時の、かりそめの関係だ。

自分が「やめたい」と言ってしまえば、本当に何事もなかったように消えてなくなる繋がりでしかない。

『違うけど……』

なんとか平静を装ってそう答えると、鳥飼はほっとしたように目元を緩め、

「じゃあ連絡先聞いても問題ないかな」と言い、通話アプリのIDを交換する流れになった。

< 148 / 276 >

この作品をシェア

pagetop