御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どうやらしっかりと見られていたらしい。
「うっ……うん……」
早穂子は急にしどろもどろになりながら、うなずいた。
四人でテーブルに座っていたが、気が付けば隣の席同士でおしゃべりをしていて、ゆずは鶴田と、早穂子は鳥飼と話し込むカタチになっていた。
鳥飼は嬉野出身で、大学から東京に出てきたのだと言う。
少し前に波佐見焼の焼き物を買いに行き、嬉野温泉に泊まったことを話すと、温泉話で盛り上がってしまった。
『温泉って、彼氏と?』
話の途中、鳥飼からさりげない様子で尋ねられたとき、早穂子の胸は一瞬でひやっと冷たくなった。それは自分にとって、触れられたくない事実だった。
(始さんは私の彼氏ではない、よね……)
彼は自分を大事にしてくれるし、かわいがってくれる。
だが自分は恋を楽しむ相手として選ばれただけ。
セフレというほどドライではないが、今このひと時の、かりそめの関係だ。
自分が「やめたい」と言ってしまえば、本当に何事もなかったように消えてなくなる繋がりでしかない。
『違うけど……』
なんとか平静を装ってそう答えると、鳥飼はほっとしたように目元を緩め、
「じゃあ連絡先聞いても問題ないかな」と言い、通話アプリのIDを交換する流れになった。