御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「しかも、涼音さんが……あんな風に始さんに笑いかけるのを見て……もう近づかないって、叫びたくなって……」
あの時、涼音の柔らかい表情を見て、早穂子は気が付いてしまった。
(涼音さんは始さんのこと好きなんだ……)
同じ男を好きななのだから、わからないはずがない。
あれは恋をしている目だ。
彼女にはマティスという恋人がいるはずだが、そんなのは覚悟を決めた人間にとっては、大した問題ではない。実際、別れていたっておかしくない。
そうなれば涼音が始に対してどういう風に振舞っても、自分にどうこう言う権利はまったくないのだ。
「私にそんな権利ないのに……始さんは私のものでもないのに……ほんと……」
好きな人の周りに素敵な女性がいるからと言って、檻に閉じ込めておくことなどできない。誰も見ないでなんて、言えるはずがない。
わかっているのに、始を束縛したくなる自分が、早穂子はイヤでイヤで仕方なかった。
早穂子は「はぁぁ……」と思いため息をつきながら、テーブルの上に突っ伏す。