御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
あれから時計の針は進み、そろそろ日付が変わりそうな時刻になっている。
とっておきのワインとチーズ、オリーブの実をつまみながら、ふたりは早穂子の部屋着に着替えておしゃべりに夢中だった。
ちなみに一時間ほど前――部屋着に着替えた時点で、帰宅は無理そうだということでお泊り会となった。
ゆずはひどく恐縮していたが、彼女を部屋に招いた時点でそうなればいいなと思っていたので、彼女が部屋にいて、寂しさを感じずにいられるのはありがたかった。
「あの副社長が、今のサホコの葛藤に気づかないわけないじゃんと思うんだよね」
オリーブの実をかじりながら、ゆずが唇を尖らせる。
「そう……かな」
「そうだよ。でも気づいてないふりしてるんだよ。あのコミュニケーションの化け物みたいな人がそういうことするのって、ちょっとずるいわ。納得できなーい!」
ゆずが不穏な顔をして、唇を尖らせるのを見ていると、彼女の言葉の端々から、始に対していい感情を持っていないことが伝わってくる。
だとしたら、それはどう考えても自分のせいなので、なんだか申し訳なくなってしまった。