御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「でもその……彼が悪いからとかじゃなくてね……? 私自身、それでいいと受け入れてたわけだし、あーだこーだと頭でっかちに考えてばかりで、自分の言いたいことは言わないままだし……」

始をなんとかフォローしようとする早穂子を見て、ゆずは面白くなさそうな顔をする。

そして「サホコももっと、ずるっこくなっちゃえ」

と、不思議なことを言い始めた。

「ずるっこく?」

どういう意味だろうと首をかしげると同時に、ゆずは急に真顔になり、顔の前でパンッと両手をあわせて勢いよく頭を下げる。

「お願い。ダブルデートして!」
「え?」

一般的に、ダブルデートといえば、二組の男女のカップルがいて、成立するものだろう。

当然、早穂子がデートする相手は始以外にいないのだが、彼がそんなことを了承するだろうか。そもそも休みらしい休みもなく、全国津々浦々を飛び回っている始の予定を押さえるなど、早穂子にはできそうにない。

(だから今日は、奇跡的なお誘いだったんだけど……)

ふと、始と涼音の姿が目に浮かんで、胸がつかまれたようにぎゅーっと苦しくなる。

(だめだめ、今は考えるのナシ!)

早穂子がそう自分に言い聞かせていると、

「あのね、鶴田くんと私、鳥飼くんとサホコでしたいの!」
「ええっ!?」

まさかの発言に、早穂子はぽかんと口をあけていた。

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