御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

(なんだか嵐のような人だな……)

ぼうっとマリィを見送っていると、鳥飼が少し困ったように笑って、「騒々しくてごめん」とささやいた。

「あ……ううん。楽しい人だね」

落ち着いた鳥飼には意外な交友関係だなと思ったが、マリィ自身は魅力的な女性だと思う。

どちらかと言うと、無口で人づきあいがうまい方でもない早穂子からしたら、まぶしすぎる存在だった。

「スペシャルランチってどんなだろう……楽しみ」

そんなことを口にしつつ、目の前に置かれたグラスの水を飲んでいると、厨房の奥から

「ダーリン、和弘君が女の子連れて来たー! でも友達だって!」

と、マリィの声が響いて聞こえた。

早穂子が目を丸くした瞬間、

「ええっ、なんだってー! 友達っ!?」

さらにまた大きな声がして、厨房から熊のような男がひょっこりと姿を現した。

年のころは三十代半ばくらいだろうか。かなり背が高く、体も分厚い。目鼻立ちはくっきりとしていて、絵に描いたような熊っぽい男性だ。
パリッと糊のきいた白い厨房服を着ているが、どこかミスマッチにも思える。

(マリィさんと並ぶと、森のくまさんと赤ずきんちゃんみたい……)
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