御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

早穂子が苦笑しつつ「こんにちは」と会釈すると、

「見物はいいから……ランチ……頼むよ」

テーブルの鳥飼が、呆れたようにため息をついた。勘弁してくれと、顔に書いてある気がして、早穂子は笑ってしまった。

「あ、やべ。すみません。めちゃくちゃおいしいやつ、持ってきますからね!」

森のくまさんは早穂子にキリッとした表情を向けた後、あっという間に身をひるがえし、厨房に引っ込んでしまった。

マリィといい、熊さんといい、かなり個性的な店のようだ。

「ったく……」

鳥飼はまた大きなため息をついた後、テーブルに手をついてぺこりと頭を下げた。

「ほんとにもう、いろいろ失礼でごめん。あれ、俺の兄貴。で、マリィは兄貴の嫁さん」
「えっ!」
「似てないって思ったんだろ。わかる。でもマジで兄貴で、あのふたりは夫婦なんだ」

マリィがダーリンと呼んだから、夫婦なのかな、と思ったが、まさか男性の方が鳥飼の兄だとは思わなかった。
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