御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
『ふたりを安心』させるためだったのか、それとも早穂子を他人の目という『おまもり』にしたのかはわからないけれど。
彼は早穂子をこっそりと利用して、兄とその妻に会いに行ったのだ。
そうでもしないと会えなかったのだろう。
「そうだったんだ?」
だがなにも気づいていないというふりをして、早穂子は首をかしげた。
鳥飼はとぼける早穂子を見てふっと笑って、
「ああ、そうだ。これは君に」
マリィに渡されたビニール袋を早穂子に差し出した。
「えっ。もらえないよ」
慌てて押し返そうとしたが、「いいから」と首を振る。
ビニールを受け取って膝にのせると、ずっしりと重かった。
マリィが鳥飼のために詰めた料理の重さに、なんだか胸が苦しくなる。
たとえ愛のかたちが違っても、これはマリィの思いのはずだ。
「その……だったらこれ、ふたりで分けましょう。そのほうがいいと思う。じゃないと、その……感想とか聞かれたら、困ると思うから……」
我ながら苦しい言い訳とは思ったが、それを聞いて鳥飼はまた困ったように笑った。
「――そうかもな。電話かかってくるし」
「うん。じゃあ、うちに行きましょう。まだ日も高いし、ちょっと寄って行って」